「……じゃあ、ここにいる人たちのほとんどは、呪術師や魔術師なの?」
沈黙を破ったのは安麗だった。首を傾げながら琉騏に言った。
「まあ、そうだな。しかし、お主らの通っているという学校の裏山に、この世界に通じる道があったとはな。私もそのことは知らなかった。この世界は閉鎖的なものとばかり思っていた」
琉騏は持っていた湯のみを床に置くと、どこか遠くを見ていた。
「この世界には、私が知らないことがまだたくさん埋もれているな。お主らは不安でいっぱいだろうが、落ち着くまでしばらくここにいるといい。この世界から抜け出す方法も見つけなければ、困るだろう?」
確かに、今このまま我武者羅に元の世界に戻ろうと思っても、方法が分からないし、時間の無駄である。せっかく『銀龍伝説』の真相に迫ることができるチャンスである。元々の目的が目的なだけに、このチャンスを逃すことはもったいない。龍矢たちにとっては、夏休み中である。時間の流れの関係は若干気になるが、ある程度は自然の流れに任せることにした。
「それじゃあ、しばらくお世話になります」
龍矢たちが声を合わせて言ったので、琉騏は少々驚いて目を丸くしたが、すぐにやさしく微笑んだ。
「うむ、遠慮せずに家のものは使っていい。……ただ、お主らのその恰好は少々目立つ。今日は休んで明日でも呉服屋へ行こうか」
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