「一言で言うと、ここはどの時代にも属さない場所だ。無論、死後の世界というわけでもない」

簡潔な琉騏の言葉を聞いた龍矢たちは、ぽかんとしてしまった。言っていることはなんとなく分かるが、疑問点が多すぎる。そもそもどの時代にも属さないという世界が実際に存在するのか。琉騏以外の人たちは何者なのか。琉騏は、龍矢たちが疑問だらけで困っていることを感じたのかどうかは分からないが、まずはこの世界について細かく説明をした。

 

 琉騏の話を要約するとこうだ。

 もともとこの世界は一つのものだった。どの時代にも呪術師や魔術師は実際に存在しており、それぞれが使う術も存在している。昔は人間も幻獣も共存していたが、時代が進むにつれて共存が困難になっていった。原因としては人間の技術が進歩し、同時に自然と共存することが困難になっていったからだ。幻獣は自然豊かな場所でなければ、存在することができない。やがて事は幻獣と人間が対立するまでに発展したが、幻獣と人間とでは、どうあがいても人間は幻獣に太刀打ちできない。人間のなかでも琉騏たちのような呪術師や魔術師はどちらかといえば思考が幻獣寄りであった。なぜなら術を発動する時は、己れの魔力と自然の力を利用するからである。

 さらに人間同士でも、呪術・魔術師と普通の人間との、2つに分かれてしまった。散々もめた挙句、最終的に呪術・魔術師たちは、それぞれが力を合わせ、また幻獣の力を借りて今いる世界を作ったのだという。これは琉騏が生まれてくる以前の、大昔の話である。

 

 ここまで話すと琉騏は一息つき、自分の前に置いてあるお茶を静かに飲んだ。銀龍は部屋の隅に相変わらず座ったままの状態だ。いつの間にか和菓子はなくなっていたが……。龍矢たちはというと黙ったままで、しばらく沈黙が続いた。いつの間にか日が暮れてきたのか、外からひぐらしの鳴き声が聞こえてきた。日も傾いてきたようで、夕焼けが深いオレンジ色の光を発している。

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