咲良は、一発で2人に見破られて悔しそうに、木からすんなり降りてきた。拗ねた表情を浮かばせながら、2人がいる昇降口辺りに歩み寄りながら言った。

「あ〜、なんで分かるかなー。やっぱりこういうのは雰囲気、演出が必要でしょ、えんしゅつ。ていうか、冷静に突っ込まないでよ。ワザと冷静に突っ込んだだろっ」

 「意外に荷物、少ないのナ」

龍矢は、咲良が背負っているナップザックに目をやりながら言った。

「スルーかいぃ! ・・・・・・まあいいや。リューヤだし。そう、この私にしては、荷物少ないだろ? そうだろ?」

咲良は笑いながら両手を腰に当て、威張る格好をした。

「私もてっきり、もっと荷物多いものかと思ってたよ」

安麗はまた階段のところに腰掛けながら言った。少し笑いながら、「私はこれだけ」背中に背負っていた弓を指差しながら言った。

「それもそれですごいよな」

 新たな声の主に、3人が同時に振り向く。

「あ、倉馬! ・・・・・・何この時間ぴったりなタイミングはっ」

咲良は、自分の腕時計にライトを付けて、時間を見ながら倉馬にそう言った。時計の針が本当に待ち合わせ時間の21時ちょうどを指していた。

「それがオレだろ? ・・・・・・ってあえて突っ込みなしかよっ!」

半ばコントをしているんだかしていないんだか、よくわからないノリ突っ込みとボケを繰り広げながらも、一応定時に4人が揃ったわけである。昇降口の場所だと落ち着かないということで、ひとまず、自分たちの教室でこれからの計画を立てることにした。

 龍矢たちはあらかじめ用意しておいた針金で、昇降口の扉を開け、下駄箱へ行ってそれぞれの上履きに履き替えた。校舎の中は薄暗く、外より気温がいくらか低く感じた。廊下には外灯の光が差し込んでいて、所々明るくなっている。夏休み中のこの時間帯に、校舎に電気が点いていると怪しまれるだろうと思い、さすがに校舎の電気をつけることは避けた。懐中電灯の電源を点け、まずは自分たちの教室、3-Cへ向かった。龍矢たちは話もせず、ただひたすらと教室を目指す。廊下には龍矢たちの足音が響き渡った。

 龍矢たちの教室は4階の東棟の端に位置している。教室に入ると、ちょうど月が窓から見えた。時計の秒針の刻む音が規則正しく聞こえ、昼間の教室とは打って変わって静かである。

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