―2章―
「ふむ、今日も異常なし、か」
山の頂上に堂々と構え、手を額に当てながら遠方を眺めた。上を向けば、雲一つない青空がまぶしく広がっており、視線を少し下げると、はるか遠方に、この山と同じくらいの高さの山が連なっている。その山々は太陽の光を青色に反射させ、まぶしく見える。さらに下を向くと、田畑が見え、家も豆粒のように見える。
「なぁ、いつまでそうやっているつもりだ? いくら我を封印したからとはいえ、お前まで・・・・・・」
「なに? もう聞き飽きたぞ、お前の言うことは」
景色を眺めていたその男は、声の主のほうに振り向き、にらめつけるように目を細めた。
青い色を帯びたその目は、青玉のごとく混じりけのない深い青色をしており、白い肌をしたその顔の左頬には刺青を施してある。栗色の長い髪の毛は後ろで結ってあり、暖かいゆるやかな風になびいた。首と腰には勾玉を、両手首には黒い数珠を身につけている。
「それに、私は別にあの事を後悔しているわけではない」
大きな太い幹をもつ欅まで行き腰を下ろすと、手に持っていた茶色い皮で覆われた分厚い本を取り出し、パラパラとめくり始めた。紙をめくる音が風に乗って消えていく。
それから1時間ほど経ったころだろうか、風向きが急に変わり、周りの草木がガサガサと音を立て始めた。
「ん? なんだこの感じは・・・・・・。お前、また何かやらかしたのか?」
「知らん。私は何もしていない。だが、この風の流れは・・・・・・」
そう話した瞬間、突然目の前に鋭い光と光線が同時に広がった。あまりのまぶしさに目をつぶってしまい、目を開けた後もしばらく視界がチカチカと光っていて、目が慣れるまでしばらくかかった。すると、目の前には見ず知らずの4人の人間が立っていた。
「なんだったんださっきのは! みんな、大丈夫か?」
「私は大丈夫だよ。倉馬と咲良も平気?」
皆、問題ない、というように手をひらひらと振ったが、同時に自分たちが見慣れない場所にいることに気づいた。
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