「一応、見えるけど・・・・・・。何で皆は見えないんだ?」

「それはこっちが聞きたいよ。何で見えるのさ? リューヤだけに見えるなんてなんかずるい。どの変にいるの?」

咲良は琉騏の立っている位置の周りを、キョロキョロと見はじめた。どう目を凝らしても見えることはない。そもそも目を凝らして見える問題なのか疑問だが。

「龍は私の後ろにいる。見えないのは、霊力がないからだ。龍をはじめ幻獣は霊体に近い存在であるが故に、能力を持たないものには見ることが出来ないのだ」

龍矢に変わって、咲良の問いに琉騏が答えた。

 とりあえずお互いに状況を把握できていない以上、ここで立ち話をするのもなんだからということになり、ひとまず山を降りて、琉騏の家に向かうことになった。

 この山は足元があまり良いとはいえず、岩や石などが転がっていて足場が悪い。背丈の高い草を掻き分けながらゆっくりと下っていく。立派な木が生い茂っており、暑さを緩和させてくれる。と同時に、小鳥のさえずる音、風が木をこすっていく音、あらゆる自然が発する音にやさしく包まれながらも、静かに歩いていく。たまに前を通り過ぎる野うさぎや、木々を素早く行ったり来たりしているリスなども伺える。なかなか野生の動物を見たことのない4人にとっては、何もかもが新鮮に映った。その4人の様子を伺うように振り向く琉騏と、その上をゆっくりと飛行する銀龍。

 どれほど歩いたのだろうか。気がつくと、既に山のふもとまで来ていた。正面を見ると、太陽の光を反射して、エメラルドブルーに輝く湖と、その後方に広がる林そのまた後方に比較的低い山が聳え立っている。てっきり人家があるものだと思っていたが、どうやら裏側に来たらしい。ありのままの自然が堂々と構えていた。

「あそこが私の家だ」

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