そういって指した琉騏の指先には、ぽつんと小さな家があり、湖の隣に建っている。近づいてみると、どうやら茅葺屋根で出来ているらしい。屋根の茅葺は切りそろえられていて、そのほかの部分は、天然木で作られているようだった。そのとき、珍しそうにその家を見ている4人を歓迎するかのように、暖かい穏やかな風が吹き、草木を揺らし、湖に波紋を作っていく。
「そんなに珍しいのか? まあ、いつまでここで立っていても仕方なかろう」
琉騏が扉をガラガラと開けると、中へ入るよう促す。その扉は昔時代劇に出てくるような引き戸で、いかにも頑丈そうな分厚いガラスと、こげ茶の色をした木の枠からできていた。
中へ入ると、空気が外よりも涼しく、畳やお香の良い匂いが充満していた。次に目に入ったのは囲炉裏だった。居間の真ん中に正方形をした形で設置してあり、囲炉裏の枠は木でできていて、四方は藍色の布でできた座布団で囲まれていた。畳は日に焼けていないみたいで、まだ若草色をしている。
「適当に、座布団が敷いているところに座っていてくれ」
そういうと、琉騏は台所のほうに向かい、銀龍はというと、部屋の隅にある藁の上に丸まった。龍矢たちは、囲炉裏を囲む形で座布団に腰を下ろした。まだ、自分達の身の回りに起こったことが理解できず、落ち着きがないように先ほどからキョロキョロ見回している。
「それにして、本当にここはどこなんだろうな?」
最初の沈黙を破ったのは龍矢だった。
「さっきの山の上からでは、人の服装とか細かい部分までは分からなかったけど、どうも他の場所に飛ばされたとは、思わないんだよな」
あぐらをかき、腕を組みながら、うーんと唸る。
「結局、私たちには見えないけど、銀龍がいるってことは、やっぱり銀龍伝説に関わっていることは確かなのよね。でも、校舎は関係なかったのかな?私はてっきり校舎の地下とかにあると思ったのに・・・・・・」
安麗は、囲炉裏を見つめながら、がっかりしたようにうなだれた。台所からコトコトと、何かを沸かしている音が、部屋に響き渡る。
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