「あーっ、でも、銀龍見たかったなぁ・・・・・・」
残念そうに咲良が両手を上げて伸びをした。銀龍は片目をだるそうに開けながら、ちらりと龍矢たちの座っているところに目を向けた。
まだ、自分達の身に何が起こったのかははっきり分からないけれども、しゃべることによって緊張は解けてきたようで、次々としゃべりだした。そこに、琉騏が四角いお盆に、お茶と和菓子を人数分乗せて居間に入ってきた。
「だいぶ慣れてきたようだな。台所まで声が聞こえたぞ」
微笑みながら琉騏は膝を突き、4人にお茶と和菓子を渡すと、空になったお盆を置き、琉騏もまた、囲炉裏に向く形で座った。
「わあ、和菓子だ! いただきます!」
4人はそういうと、和菓子を食べ始めた。銀龍はおいしそうに食べている4人をじっと見ると、自分もなにか食べたくなったのか、琉騏に何かくれと言う。
「? なんだ、お前も欲しいのか? それはそうと、ちゃんと皆に挨拶をしたのか? 少しくらい姿を見せてやってもよかろう」
振り向きながら銀龍に話しかける琉騏をみて、咲良がぱっと表情を明るくさせ、琉騏に聞いた。
「私たちにも、銀龍見ることが出来るの?!」
いきなり大きな声がしたのが驚いたのか、琉騏は少し目を見開いた。が、すぐに普通の表情に戻ると
「それは、銀龍が霊力のない人間に、姿や声を聞かせようと思えば、可能ではあるが・・・・・・」
琉騏はそこで、銀龍のほうを向いた。
「・・・・・・少しだけだぞ」
低い声が聞こえた瞬間、部屋全体が明るくなり、徐々に光が消えていくと、光の中から姿を小さくした銀龍が現れた。銀色をした体と、エメラルドグリーンと深い青が交じり合ったような色をした鬣(たてがみ)は、屋内独特のそこまで明るくない光を受け、きらきらと光を反射させている。目は、鬣の青い部分と同じ色をしており、角は、銀、エメラルドグリーン、青が交じり合ったような色をしており、いかにも頑丈で硬そうだ。実際の大きさはまだ分からないが、さすが幻獣、小さくても十分に神々しく見える。
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